実務ガイド

営業リストを買う前に、法人番号が入っているか見てください

2,032社を国のデータベースにぶつけたら、埋まったのは大企業のほうだった

2026-08-25読了目安 5分

前回、IT受託の営業リスト、無料でどこまで作れるかという記事で、公的なデータだけで関東2,032社の名簿を組む手順を書きました。

その記事には、こう書いてあります。

国が運営する法人情報サイト(gBizINFO)には、法人番号で引くと住所・Webサイト・従業員数などが返る仕組みがあり、法人番号を背骨に、骨格リストへ機械的に肉付けできるのです。

書いておきながら、私たちはそれをやっていませんでした。

代わりにやったのは、AIに会社名から検索させてホームページを探す仕組みを作ることでした。動くには動きます。ただ費用がかかり、当たるのは8割です。無料で確実に引ける手段が目の前にあるのに、です。

先日それに気づいて、実際に2,032社ぶんを引いてみました。結果は予想と違いました。 その数字が、この記事の中身です。

連絡先の無いリストは、1社も当たれない

まず、私たちが作ったリストの中身を正直に書きます。4項目しかありません。

法人番号/事業者名/都道府県/補助金の採択年。

住所も電話番号もホームページのURLも入っていません。都道府県までしか分からないので手紙は出せない。電話番号が無いのでかけられない。URLが無いので問い合わせフォームも送れない。

狙う相手としては悪くないリストでした。IT導入補助金を実際に通している会社なので、活動していて予算も動いている。それでも当たる手段がゼロなら、名簿としては使えません。

リストを買う人が本当に買っているのは「誰を狙うか」ではなく「どう連絡するか」のほうだ、と気づいたのはこのときです。

法人番号は、無料のデータベースを開ける鍵

ここで効いたのが法人番号でした。国が法人1つに1つ振っている13桁の番号です。登記されていれば必ずあり、社名の表記ゆれでも、移転でも、改称でも変わりません。

そして経済産業省が「gBizINFO」というサイトを運営していて、法人番号を投げると、その会社の公開情報が返ってきます。無料です。 利用にはメールアドレスでの申請が要りますが、審査は無く、10分ほどで使えるようになります。

会社名で検索すると「株式会社」の位置や旧字で外しますが、法人番号なら完全に一致します。推測が要りません。

だから手順としては単純です。手元のリストの法人番号を1件ずつ投げて、返ってきた情報を横に並べる。リストとリストを、番号でぶつける。

手元のリスト(2,032社) 補助金の採択事業者一覧から作った 法人番号 13桁 会社名 都道府県 住所     — 電話番号   — ホームページ — 「誰を狙うか」は決まっている でも、連絡する手段が無い 国のデータベース(無料) 法人番号で引く/2,031社が見つかった 法人番号 13桁 所在地100% 従業員数33% 代表者名23% 事業概要20% ホームページ16% 住所は全社ぶんある ホームページは6社に1社しか無い 完全一致 同じ番号だから 推測が要らない 2,032社中 2,031社が一致 住所を使う当たり方は、2,031社すべてに開いた 所在地が100%埋まったから フォーム営業は、まだ足りない 1,714社はURLが空のまま 埋まらなかったぶんを、どう埋めるか(あるいは埋めないか)が次の判断
手元のリストと国のデータベースは、どちらも単体では使えない。法人番号という同じ鍵で突き合わせると、住所は全部埋まった。ただしホームページは6社に1社しか無く、「無料で全部埋まる」とはいかなかった

実際にぶつけた結果

2,032社ぶんを引きました。1件ずつ、0.2秒間隔で、7分ほどです。

まず、鍵としては完璧でした。 法人番号で一致したのが2,031/2,032社(100%)。見つからなかったのは1社だけです。会社名で照合していたら、こうはいきません。

次に、何が埋まったか。ここが本題です。

項目 埋まった数 割合
所在地 2,031 100%
従業員数 677 33%
代表者名 461 23%
事業概要 397 20%
ホームページ 317 16%

私が期待していたのはホームページでした。16%です。 6社に1社しかありません。

一方で、まったく期待していなかった所在地が100%埋まりました。 2,031社すべてに番地まで入っています。

16%の正体は「誰がその情報を入れたか」だった

なぜホームページだけ極端に低いのか。規模別に数えると、答えが出ました。

会社の規模 社数 ホームページあり 割合
1〜9名 148 40 27%
10〜49名 154 54 35%
50〜299名 205 104 51%
300名以上 170 118 69%
従業員数が不明 1,351 0 0%

従業員数が分からない1,351社は、ホームページも1社も入っていません。 ちょうどゼロです。

つまりgBizINFOの詳細情報(従業員数・ホームページ・代表者名・事業概要)は、まとめて入っているか、まとめて空かのどちらかで、中間がない。会社が自分で自社プロフィールを登録したかどうかという1本の線で分かれています。

そして大きい会社ほど登録している(300名以上で69%)。裏返すと、中小ほど空です。

これは無料のデータベース全般に言えることだと思います。 国が持っている情報(登記由来の所在地)は全社ぶんあり、会社が自分で出した情報は、出す余裕のある会社のぶんしかない。 「無料で埋まるか」は、その項目を誰が入れたかで決まります。

この数字で、できることとできないことが分かれた

引く前と後で、選択肢の形が変わりました。

開いたのは、住所を使う当たり方です。 所在地が2,031社すべてに入ったので、郵送でもFAXでも、住所さえあれば届く手段は全部使えるようになりました。 引く前はゼロだったので、ここが一番大きい変化です。

開かなかったのは、フォーム営業です。 ホームページが埋まったのは317社だけで、1,714社は空のまま。ここを埋めるには、会社名から検索して探すしかありません。AIにやらせる方法もありますが、費用と時間がかかります。

そして絞り込みも、思ったほど効きませんでした。 従業員数が分かるのは680社だけです。「10〜299名の会社に絞る」といった条件を掛けられるのはこの範囲で、残る1,351社は規模すら分からないので、絞りようがありません。

買う 全部入りのリストを買う 約11万円 (2,032社・1件55円) 連絡先は最初から全部入っている 組み合わせる 狙いの名簿 + 国のデータベース 0円 (どちらも公開データ) 住所は全部。ホームページは6社に1社 つなぐ鍵は、国が振った13桁の法人番号 リストにお金をかける前に、手元のリストに法人番号が入っているか見る
リストは「買うもの」だと思われているが、狙いを決める名簿と連絡先の名簿は別々に無料で手に入る。ただし無料で埋まる項目には偏りがあり、そこが分かれ目になる

つまり無料で手に入ったのは「全社の住所」と「一部の会社の詳細」で、この2つは性質が違います。 前者はそのまま母集団として使えますが、後者は「たまたま登録していた会社」に偏った集団です。絞り込みの条件に使うと、知らないうちに大企業寄りのリストになります。 ここは注意したほうがいい。

住所だけでいいなら、もっと確実な入口がある

補足を1つ。ホームページが要らず住所さえあればいいなら、国税庁の「法人番号システム Web-API」のほうが確実です。

返ってくるのは商号・所在地・法人番号の基本3情報だけですが、これは登記の大元なので全法人ぶんあります。 無料で、アプリケーションIDの申請が要ります。gBizINFOと国税庁で情報が食い違ったら、国税庁のほうを信じてください。

「手紙を出したいだけ」なら、こちらで足ります。

まとめ:リストにお金をかける前に

営業リストは「買うもの」だと思われがちですが、狙いを決める名簿と、連絡先の名簿は、別々に無料で手に入ります。 繋ぐ鍵さえあれば、自分で組めます。

だから、リストを買う前にやることは1つです。

手元のリストに、法人番号の列があるか見てください。

  • あれば — 国の無料データベースと突き合わせられます。少なくとも住所は全社ぶん埋まるので、郵送は届きます
  • 無ければ — 会社名で照合するしかなく、表記ゆれで外れます。買い直すか、別の手段で探すか、という話になります

そして、無料で埋まる項目には偏りがあることも覚えておいてください。私たちは「補助金を通した会社ならホームページくらい登録しているだろう」と思っていました。6社に1社でした。

実際に引いてみるまで、この数字は誰にも分かりません。7分で分かります。


ここまでの内容は、Excelと無料のAPIだけで実行できます。道具は要りません。

私たちが作っているリレーションログには、こうして組んだ名簿をためておく「営業リスト」という置き場があります。取り込むときに法人番号で既存の取引先と突き合わせるので、すでにお付き合いのある会社に間違ってDMを送る事故を止められます。同じ名簿を二度取り込んでも、重複として止まります。

ホームページが空の行をAIに探させる機能もありますが(プロプラン・月300件まで)、この記事のとおり、まず無料で埋まるところは無料で埋めてください。 そのほうが速くて確実です。

建設業のように業種の名簿がある場合の話は、電気工事会社の営業リスト、無料でどこまで作れるかに書きました。

そのつながりを、資産に変えよう。

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