元請の担当者が代わってから、声がかからなくなった
会社との関係は切れていないのに仕事が止まる。原因は人の交代で、気づくのはたいてい半年後
去年まで月に2〜3件あった元請からの引き合いが、気がつくと年に数件になっている。断られたわけではありません。トラブルを起こしたわけでもない。値段で負けた記憶もない。ただ、声がかからなくなった。
心当たりを探して、ようやく思い当たります。「そういえば、あそこの工事課長、去年の春に代わったな」。
この形の失注は珍しくありません。そして、とにかく気づくのが遅い。理由は単純で、付き合いが会社ではなく人に付いているのに、記録は会社単位でしか残っていないからです。(同じことが自社の側で起きたのが、社長にしか関係がない状態です。今回は相手側の話をします。)
なぜ半年も気づかないのか
普通の失注は痛みが早く来ます。見積を出して、返事が来なくて、他社に決まったと聞く。悔しいけれど、その日のうちに分かります。
担当者交代による離脱は、そうなりません。遅れて効いてくるうえに、遅れているあいだ手元は忙しいままです。
工事は工期があります。担当者が代わった時点で動いている物件は、そのまま最後まで流れます。3月に人が代わっても、その前に決まっていた仕事が夏まで続く。現場は回っていて、請求も立っている。「新しい話が来ていない」という事実だけが、忙しさの裏に隠れます。
しかも、会社との縁が完全に切れるわけではありません。年に一度は何かの相談が来る。安全書類のやり取りは続いている。だから「取引が終わった」という自覚も生まれません。気づくのは、決算で前期と比べたときか、暇になったときのどちらかです。そのころには、後任の頭の中で発注先の並びが固まっています。
交代は、たいてい静かに起きる
先方の人事は、こちらに知らされません。分かるのは、だいたい次のような形です。
年始の挨拶で「◯◯は異動になりまして」と言われる。現場でもらった名刺の肩書が変わっている。メールの返信が別の人から来る。共有されたのは事実だけで、「これまでこの会社にどれだけ助けてもらったか」は引き継がれていません。
交代には型がいくつかあります。退職——最も切れやすい。前任が社内に残っていないので、後任に前提を伝える人がいません。異動・昇進——本人は社内にいますが、発注の権限からは外れています。挨拶に行っても、もう決められる立場ではない。組織改編——工事部が本部に統合されて発注の窓口ごと変わる型で、これはこちらの努力とは無関係に起きます。
どの型でも共通しているのは、後任にとって自社は「前からある業者の一つ」でしかないことです。何ができて、どの現場で無理を聞いて、どこで助けたか。それが伝わっていない状態で、後任は自分が知っている業者から順に電話をかけます。
「誰を見失うと危ないか」を、先に決めておく
打ち手の中心は、交代のあとにはありません。交代の前に、相手の会社の中で誰が要なのかを決めて、書いておくことです。
要になる人は、たいてい2種類に分かれます。
ひとつは、話を持ってくる人。工事課長や現場代理人のように、案件を振り分ける立場の人です。ここが冷えると、新しい話そのものが来なくなります。数字に出るまで時間がかかるぶん、いちばん怖い。
もうひとつは、誰に出すかを決める人。購買や部長のように、業者の選定に判を押す立場です。話を持ってくる人が推してくれても、ここが知らない会社だと通らないことがあります。
この2人が同じ人の会社もあれば、別々の会社もあります。大事なのは会社ごとに書き分けておくことで、「あそこは課長がすべて決める」「あそこは課長が推して部長が決める」が分かっていれば、どちらが代わったときにどれだけ危ないかが判断できます。
そして、意外と抜けるのが3つ目です。いま自分が連絡している相手は、この2人のどちらでもないことがある。 窓口は若い担当者で、その人はいい人だけれど、発注を決める側にはいない。この状態は、平時は何も問題を起こしませんが、交代が起きたときに「誰にも顔が知られていない」という形で表面化します。
会社の「最終連絡日」では足りない
多くの会社が、取引先の管理表に「最終連絡日」の列を持っています。これがあるだけでもExcelの管理表としては上等なほうですが、担当者交代の検知には足りません。
理由は、会社の日付は誰かと話せば更新されてしまうからです。安全書類の担当者と月に一度やり取りしていれば、その会社の最終連絡日は常に新しい。一方で、発注を決める工事課長とは半年話していない。表の上では「よく連絡している会社」に見えて、実際には要の人との線が切れています。
必要なのは、会社の日付と別に、その人との最終接点がいつかを持つことです。「A社とは先月連絡した」ではなく「A社の田中課長とは5月から話していない」と言える状態。この粒度でないと、静かな離脱は見つかりません。
それでも交代が起きたら——最初の90日
とはいえ、多くの場合、交代はすでに起きています。気づいた時点で終わりではありません。むしろ、交代直後の3か月は取り返せる期間です。
前任者に紹介を頼む。 これが最も効きます。異動しただけならまだ社内にいるので、「後任の方にご挨拶したい」と一言もらえるかどうかで、初回の温度がまるで違います。退職していても、連絡が取れるなら実情を教えてもらえます。ここを飛ばして直接後任に行くと、飛び込み営業と同じ扱いになります。
実績を1枚にして持っていく。 後任は自社を知りません。「御社とは◯年から、◯◯現場と◯◯現場をやらせていただきました」を、日付と現場名で言えるようにする。口頭で「長いお付き合いです」と言うより、記録から起こした事実のほうが強い。この1枚が作れるかどうかが、日々の記録の有無で決まります。
前提を確認し直す。 単価の取り決め、対応できる範囲、緊急時の連絡先。前任と口頭で合意していたことは、後任の頭には存在しません。「以前からこうなっています」が通じない前提で、もう一度合わせておきます。
そして、次の窓口を決めて書く。 後任の名前を管理表に書き換えるだけでなく、その人が話を持ってくる人なのか、決める人なのかまで確かめる。ここを曖昧にしたまま次の交代を迎えると、同じことがくり返されます。
リレーションログでの扱い方
私たちが作っているリレーションログは、まさにこの型の事故を防ぐために作った道具です。
人物に「案件を運ぶ人(源泉)」「担ぎ先を決める人(決定権)」の役割を付けられます。会社には「今アプローチする人(入口)」を1人決められて、付け替えの履歴も残ります。上に書いた3つ(持ってくる人・決める人・いまの窓口)が、そのまま記録の形になっているということです。
会社詳細の先頭には、この3行がそれぞれの人との最終接触つきで並びます。会社の日付ではなく、人ごとの日付です。決まっていないものは「未設定」とそのまま出します。 誰も判断していないことを、それらしい数字で埋めないためです。

上の画面がまさにその例です。会社としては30日前に接点があり、温度感も良い。それでも、案件を運ぶ人とは本人と直接は話せておらず、決める人にいたってはまだ誰か決めていない。この状態で先方の担当が代われば、気づくのは半年後になります。
役割を付けた人に「退職・異動した」の印を立てると、会社詳細に赤字で「後任を確かめる」と出て、ダッシュボードの放置アラートにもその人の名前と役割つきで挙がります。指定はわざと外しません。外すと「見失った」こと自体が見えなくなるからです。
さらに、役割を付けた本人と90日話せていない場合も、会社側の接点が動いているかどうかとは別勘定で挙がります。上の図でいえば「173日前」の行が、こちらから知らせに来るということです。
会社ごとの相関図でも、役割を指定した人は枠で強調されます。誰が要かを図で見られるので、担当を替えるときにも口頭の説明が要りません。
宣伝はここまでにします。道具を入れなくても、この記事の内容は紙でもExcelでも実行できます。 会社ごとに「持ってくる人・決める人・いまの窓口」の3人を書き出して、それぞれと最後に話した日を書く。それだけで、静かな離脱の大半は見えるようになります。
効果は、この問いで測ってください
「主要な元請5社について、次の発注を決める人の名前を、5人とも言えますか」
言えるなら、記録の形はどうあれ、要は押さえられています。言えないなら——たとえば「あそこは前は田中さんだったけど、今は誰だろう」が1社でもあるなら、その会社では、すでに静かな離脱が始まっているかもしれません。
そのつながりを、資産に変えよう。
リレーションログは30日間、全機能を無料でお試しいただけます。
まずは画面を見るだけでも構いません。
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