営業のしくみ

SFAが続かないのは、入力が重いからだけではない

「直し方」を覚えられないと、データは静かに信用を失う

2026-09-18読了目安 4分

営業ツールが定着しない理由として語られるのは、ほとんどが「入力が重い」です。それは正しい。でも、現場で実際に起きていることを見ていると、入力の前に、もうひとつ手前で止まっていることが多いのです。

直っていない。

所属が変わった人が、前の会社のままになっている。案件の担当を付け間違えたまま、誰も触っていない。確度を上げたはずなのに、上げた本人しか知らない。——こういう「ずれ」は、入力した瞬間ではなく、入力したあとに生まれます。

ずれは、入力のあとに来る

データは入れた瞬間がいちばん正しく、そこから先は現実のほうが動きます。人は異動し、案件は担当が替わり、見立ては変わる。ツールの中のデータは、直さない限り、入れた日のままです。

問題は、直すのが入れるより面倒なことです。入れるときは「新規」のボタンを押せばいい。直すときは、どの画面の、どの項目を、どう開けば直せるかを知っていないといけない。所属を変えるのは人物の画面か、会社の画面か。案件の担当を替えるのは案件の側か、人物の側か。ツールを毎日開いている人ならすぐ分かります。月に数回しか開かない人は、探しているうちに「あとで」になります。

そして「あとで」は来ません。

直らないデータは、静かに信用を失う

ここからが、入力の話とつながります。

直っていないデータを見た人は、「これ、古いんじゃないか」と思います。一度そう思うと、次からはツールを見る前に、担当者に聞くようになります。聞けば分かるのだから、ツールを見る理由が減る。見る理由が減ると、入れる理由も減る。誰も見ないところに、誰も入れません。

つまり順番はこうです。

ツールが使われなくなる順番 ① 直し方を探す どの画面のどこ? →「あとで」になる ② 直さない 所属・担当・確度が 入れた日のまま ③ 信用されない 「古いのでは」 → 見る前に人に聞く ④ 入れない 誰も見ない場所に 誰も入れない 入れないから、さらにずれる(一周して戻る) 「入力が重い」と言われているのは ④。先に起きているのは ①。 ④だけを軽くしても、①が残っていれば、また同じところに戻ってきます。
「入力が重い」は結果に近い。最初に起きているのは、直し方を探して「あとで」にする瞬間

「入力を軽くする」打ち手は、④を軽くします。それは要ります。でも①を放っておくと、一周してまた同じところに戻ってきます。

「直し方を覚える」を、なくせないか

私たちが考えたのは、直し方を分かりやすくすることではなく、直し方を覚えなくて済む形にすることでした。

やり方はひとつです。直したいことを、そのまま言葉で書く。

「田中さんの役職を部長に」「このタスクの相手は伊藤さん」「渡辺さんの会社を日本ロジに」——こう書くと、AIが「どの画面の、どの項目のことか」を探して、対象・項目・いまの値・新しい値の表にします。人物や会社のページを開いていれば、名前を書かなくてもその画面のこととして受け取ります。

リレーションログの「直す」の画面。人物のページで「役職を部長に」と書くと、対象=渡辺 修、項目=役職、いまの値=取締役、新しい値=部長、の表が出て、「この内容で直す」と「やめる」のボタンが並んでいる
実際の画面:人物のページで「役職を部長に」と書いた直後。まだ何も書き換わっていない。表を見て「この内容で直す」を押すまで、データは動かない

この「直す」はプロプランの機能で、無料トライアルの期間中はそのまま使えます。

ここまで読むと、「AIが勝手に直すのは怖い」と思う方がいるはずです。私たちもそう思いました。だから、次の3つを崩さないと決めました。

崩さないと決めた3つ

1. AIは案を出すところまで。押すのは人。 表が出た時点では、何も書き換わっていません。「この内容で直す」を押したときだけ書き換わります。表の行は1行ずつ外せるので、AIが3つ出して2つだけ正しいときは、2つだけ押せます。

2. 押したあとも、戻せる。 直した内容は「AIの直し履歴」に、いつ・何を・どの値からどの値へ、と残ります。1回で取り消せます。

3. なぜそうなるかを、押す前に言う。 たとえば人を別の会社へ移すと、その人の未完のタスクも一緒に移ります。これを黙ってやると「勝手に動いた」になる。だから表の下に、「この人の未完のタスク1件も一緒に移ります(タスクの会社は、その人の会社に合わせる決まりです)。完了したタスクは、その会社でやったことの記録なので、前の会社に残ります」と出します。断るときも同じで、理由と、代わりにどの画面で直せるかのリンクを添えます。

3つ目が、いちばん手間のかかったところです。理由を言えない変更は、たとえ正しくても信用されません。 これは「関係のスコアを出さない」と決めたときと同じ考え方で、数字でも変更でも、根拠を説明できないものは出さない、ということです。

受けないと決めたこと(正直に)

「何でも言えば直る」わけではありません。受けないと決めたものがあります。

  • 削除と追加。 「案件を消して」「人を足して」は受けません。消すのはその画面から、足すのはメモの取り込みからです。取り消せない操作と、勝手に増える操作は、言葉の勢いで起きないほうがいい。
  • 案件のパートナー(担ぎ手)の変更。 これは商流(誰と契約するか)と紹介元と、3つ一緒に決める項目なので、一言では決められません。案件の編集画面で3つを並べて決めてもらいます。
  • 同姓が2人いるとき。 「田中さんの役職を」で田中が2人いれば、当てずっぽうで選ばず、どちらか聞き返します。
  • まとめて変える要望。 「全部の確度をBに」のような一括の変更は受けません。1回に受けるのは10件までで、同じ項目を3件以上まとめて変える要望は画面からお願いしています。

受けないもののほうが説明が長くなりましたが、それでいいと思っています。「できないこと」がはっきりしている道具は、できることを信じてもらえるからです。

効果は、この問いで測ってください

「先月、所属や担当が変わった人は何人いて、そのうちツールの中で直っているのは何人ですか。」

数えられないなら、たぶん直っていません。そして直っていないデータを、誰かが「古いのでは」と思いながら見ています。

入力を軽くする前に、直すのを軽くする——順番はそちらが先だと、私たちは考えています。


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この記事を書いた人 設楽 義朗株式会社リレーションベース 代表取締役)
MSP・Web制作会社・SIer とのパートナー営業を長年担当。「案件になる前の関係」を残すために、リレーションログを企画・開発している。

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