SFAが続かないのは、入力が重いからだけではない
「直し方」を覚えられないと、データは静かに信用を失う
営業ツールが定着しない理由として語られるのは、ほとんどが「入力が重い」です。それは正しい。でも、現場で実際に起きていることを見ていると、入力の前に、もうひとつ手前で止まっていることが多いのです。
直っていない。
所属が変わった人が、前の会社のままになっている。案件の担当を付け間違えたまま、誰も触っていない。確度を上げたはずなのに、上げた本人しか知らない。——こういう「ずれ」は、入力した瞬間ではなく、入力したあとに生まれます。
ずれは、入力のあとに来る
データは入れた瞬間がいちばん正しく、そこから先は現実のほうが動きます。人は異動し、案件は担当が替わり、見立ては変わる。ツールの中のデータは、直さない限り、入れた日のままです。
問題は、直すのが入れるより面倒なことです。入れるときは「新規」のボタンを押せばいい。直すときは、どの画面の、どの項目を、どう開けば直せるかを知っていないといけない。所属を変えるのは人物の画面か、会社の画面か。案件の担当を替えるのは案件の側か、人物の側か。ツールを毎日開いている人ならすぐ分かります。月に数回しか開かない人は、探しているうちに「あとで」になります。
そして「あとで」は来ません。
直らないデータは、静かに信用を失う
ここからが、入力の話とつながります。
直っていないデータを見た人は、「これ、古いんじゃないか」と思います。一度そう思うと、次からはツールを見る前に、担当者に聞くようになります。聞けば分かるのだから、ツールを見る理由が減る。見る理由が減ると、入れる理由も減る。誰も見ないところに、誰も入れません。
つまり順番はこうです。
「入力を軽くする」打ち手は、④を軽くします。それは要ります。でも①を放っておくと、一周してまた同じところに戻ってきます。
「直し方を覚える」を、なくせないか
私たちが考えたのは、直し方を分かりやすくすることではなく、直し方を覚えなくて済む形にすることでした。
やり方はひとつです。直したいことを、そのまま言葉で書く。
「田中さんの役職を部長に」「このタスクの相手は伊藤さん」「渡辺さんの会社を日本ロジに」——こう書くと、AIが「どの画面の、どの項目のことか」を探して、対象・項目・いまの値・新しい値の表にします。人物や会社のページを開いていれば、名前を書かなくてもその画面のこととして受け取ります。

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ここまで読むと、「AIが勝手に直すのは怖い」と思う方がいるはずです。私たちもそう思いました。だから、次の3つを崩さないと決めました。
崩さないと決めた3つ
1. AIは案を出すところまで。押すのは人。 表が出た時点では、何も書き換わっていません。「この内容で直す」を押したときだけ書き換わります。表の行は1行ずつ外せるので、AIが3つ出して2つだけ正しいときは、2つだけ押せます。
2. 押したあとも、戻せる。 直した内容は「AIの直し履歴」に、いつ・何を・どの値からどの値へ、と残ります。1回で取り消せます。
3. なぜそうなるかを、押す前に言う。 たとえば人を別の会社へ移すと、その人の未完のタスクも一緒に移ります。これを黙ってやると「勝手に動いた」になる。だから表の下に、「この人の未完のタスク1件も一緒に移ります(タスクの会社は、その人の会社に合わせる決まりです)。完了したタスクは、その会社でやったことの記録なので、前の会社に残ります」と出します。断るときも同じで、理由と、代わりにどの画面で直せるかのリンクを添えます。
3つ目が、いちばん手間のかかったところです。理由を言えない変更は、たとえ正しくても信用されません。 これは「関係のスコアを出さない」と決めたときと同じ考え方で、数字でも変更でも、根拠を説明できないものは出さない、ということです。
受けないと決めたこと(正直に)
「何でも言えば直る」わけではありません。受けないと決めたものがあります。
- 削除と追加。 「案件を消して」「人を足して」は受けません。消すのはその画面から、足すのはメモの取り込みからです。取り消せない操作と、勝手に増える操作は、言葉の勢いで起きないほうがいい。
- 案件のパートナー(担ぎ手)の変更。 これは商流(誰と契約するか)と紹介元と、3つ一緒に決める項目なので、一言では決められません。案件の編集画面で3つを並べて決めてもらいます。
- 同姓が2人いるとき。 「田中さんの役職を」で田中が2人いれば、当てずっぽうで選ばず、どちらか聞き返します。
- まとめて変える要望。 「全部の確度をBに」のような一括の変更は受けません。1回に受けるのは10件までで、同じ項目を3件以上まとめて変える要望は画面からお願いしています。
受けないもののほうが説明が長くなりましたが、それでいいと思っています。「できないこと」がはっきりしている道具は、できることを信じてもらえるからです。
効果は、この問いで測ってください
「先月、所属や担当が変わった人は何人いて、そのうちツールの中で直っているのは何人ですか。」
数えられないなら、たぶん直っていません。そして直っていないデータを、誰かが「古いのでは」と思いながら見ています。
入力を軽くする前に、直すのを軽くする——順番はそちらが先だと、私たちは考えています。
そのつながりを、資産に変えよう。
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まずは画面を見るだけでも構いません。
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